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四苦八苦
困難に直面して苦しんでいるとき、四苦八苦しているなどという言葉を使うことがあります。 この言葉は、もともとは仏教の中のお釈迦様のお話に出てきます。 人は生まれることで避けては通れぬ苦しみがあります。 「生・老・病・死」の4つはごく普通の人生を歩んでいく中で、ほとんどの人が経験します。 そして、生きていく中でさらに4つの苦しみ、「愛別離苦(あいべつりく)・怨憎会苦(おんぞうえく)・五蘊盛苦(ごうんじょうく) ・求不得苦(ぐふとくく)」があり、この4つを合わせて合計8つの苦しみのことを四苦八苦といいます。 四苦八苦というと、たして12の苦しみがあるように思いがちですが、4つの苦しみと4つの苦しみをたして八苦という意味になります。 避けては通れぬこれらの苦しみをどう乗り越えて生きていくかが人生のテーマではないでしょうか。 生(しょう) 最近の子どもたちは、生まれてこなければよかったなどと簡単に言いますが、この命の誕生には何百兆倍、何千兆倍もの確率で奇蹟が起こっているのです。 私たちの命の誕生は、まず、ご先祖様の巡りあわせとお父さんお母さんの持つ70兆通りもの染色体の組み合わせによるものなのです。 染色体による70兆通りもの組み合わせの数は地球1万個分の人口に匹敵し、その確率と先祖分の確率をかけたものが私たちが生まれてきた確率になるのです。 つまり、無限に広がる宇宙の中にある星から一粒の砂を拾い上げたような確率になるのです。 決して意識してできることではないのです。 だから、昔の人は子どもを産むではなく子どもを授かるという表現をしたのではないでしょうか。 組み合わさった染色体を持つ赤ちゃんも母胎の中で着床し、成長し、生まれて、さらに大人になって次の子孫を残さなければ、命はそこで途絶えてしまうのです。 大人になった男女が力を合わせて育てていかなければ次の子育てにはつながっていかないということになるのです。 この世に存在すると言うことは、人間にはどうにもできない自然の不思議な力やたくさんの人々の力を借りて存在しているのです。 本来はそれだけでありがたいことのはずなのです。 オリンピックで金メダルを取るよりも、ミスユニバースで世界一になるよりも、宇宙飛行士になってスペースシャトルに乗るよりもはるかに不思議な奇蹟の力で私たちひとりひとりが存在しているのです。 同じ顔でなく、同じ心でなく、特別な個性を持って生まれてきているのです。 老(ろう) 「子どもしかるな 来た道だもの 老人笑うな 行く道だもの・・・」という言葉があります。 40代、50代にもなると体の衰えを感じるようになります。 顔にはしわが増えます。 そんなときふと若い頃を懐かしむことがあります。 人は生きていればやがて老いていくものなのです。 誰かの手を借りねばできぬことも増えてくるものです。 若い者が、元気な者が手を貸すのは共同体の基本だと思います。 しかし、どうでしょう。 若い頃、年寄りを毛嫌いして手を貸さなかったら・・・。 おそらく、巡り巡って、自分が年をとったとき、人の手が必要になったとき誰も貸してくれません。 子育てで手をかけていなかったら、子どもは親を大切には思いません。 だから、若いうち、元気なうちに手を貸すということはとても大切なことなのです。 病(びょう) 心の不安と体の病気にはつながりがあります。 しかし、現代の西洋医学では科学的解明がなされぬものへの信用はありません。 自律神経の影響で甘いものを食べ過ぎたり、お酒を飲み過ぎたりします。 不安定な心のバランスが生活習慣に影響を与えれば病気にもなっていきます。 ストレス社会の中にあって、心身ともに健全に生き抜くことは非常に難しいことになります。 食べること、寝ることなど体に与える影響をいくら考えても人には寿命があります。 細胞は分裂を繰り返すことで生き残っていくのですが、やはりその細胞分裂の回数には限界があります。 まして、本来の体が求めていない環境下では、細胞分裂の段階で異常をきたすこともあります。 それが癌なのです。 冷えや酸性過多が臓器に与える影響は糖尿病やリウマチ、痛風など様々な病気として体に現れてきます。 病気になることで、そこから心の症状に気づき、生きる意味や命の大切さへの学びの時間になって欲しいものです。 病気を癒すということは、心の治療にもつながっているのです。 死(し) 死は誰にも平等に訪れます。 しかし、受けとめる準備が有るか無いかで雲泥の差があります。死への苦しみにとらわれ、不安になってしまうこともあります。 その不安をとることこそが学びであり、学ぶことによって何かを悟るということになっていくのではないでしょうか。 あれだけの奇跡的な確率で誕生した命も、百年も経たないうちにほとんどが絶えていくのです。 やがて土に還っていくのです。 その間に何をすれば幸福というご褒美を授かるのでしょう。 あっという間の諸行無常の人生でどう過ごしていくかを考えますと、人の一生は和の中にあって価値を育み、色々な価値を理解していくことで豊かさが増し、周囲との相互の中で人間的な幸福感への影響を与えたり、与えられたりしていくのだと思います。 子育ての最大のテーマは限りある命を大切にし、幸せに生き、死を理解し、やがてくる死を如何に受け入れられるようになるかではないでしょうか。 それを親が身をもって教えていくことだと思います。 だから子どもが親より先に死ぬことはとてもつらいことなのです。 愛別離苦(あいべつりく) 人間はいつかは必ず愛する人と別れなければならない苦しみがあります。 事故や病気にならなくても寿命によっても命はつきます。 お互いに永遠に生きていくことはできないのです。 怨憎会苦(おんぞうえく) 愛別離苦とは逆に、絶対に会いたくない嫌な人もいます。 自分を困らせる人、意地悪をする人などで国によっては戦争や紛争などで命をねらう人に遭うこともあります。 そういった苦しみを怨憎会苦と言います。 五蘊盛苦(ごうんじょうく) 人間の持つ感覚によって起こる苦しみです。 例えば、人間は水を飲まなければ生きていけません。 水を飲まないと、やがて喉が渇き、それによって渇きの苦しみに襲われます。 食べ物だってそうです。 食事を断たれると、飢えの苦しみが襲ってきます。 ケガや病気をすれば痛みに苦しみます。 渇きを癒すために水を飲むと喜びを感じます。 空腹を満たすために食事をしても喜びを感じます。 つまり楽しむことと苦しむことは裏表なのです。 楽しめる感覚があるからこそ、その逆になったとき苦しむのです。 求不得苦(ぐふとくく) 望みがかなえられないことによって感じる苦しみです。 人間は求めるものをすべて手に入れることは決してできません。 どんなに欲しいと思ったものでも、どんなに結婚したいと思った相手でも、必ずしも望みがかなうとは限りません。 こうした望みがかなえられないことによる苦しみが、求不得苦です。 ではどうすればこういった苦しみから逃れることができるのでしょうか? どうやら人の苦しみは執着するところにあるようです。 長生きをしたい、病気をすぐに治したい、若いままでいたい等々。 執着して苦しむのは、この世が“諸行無常”だからなのです。 どんなに立派であっても、どんなに強くても、どんなにきれいでも、永遠ではないのに永遠に存在すると錯覚して守ろうとしたり、継続しようとして執着し、苦しむのです。 諸行(すべての現象・実体)は無常(限りがある)つまり、どんなものでも、いつかは必ず滅びるのです。 この無常を受け入れられるようになれば煩悩という欲望に惑わされることも無くなるでしょう。 以前、有名大学に進学し、有名企業に就職しても不幸を感じている人が多いというお話をしましたが、自分だけの欲望を満たそうとして苦しんでいるのです。 人が苦しみを乗り越えるその先には他人の喜ぶ姿が必要なのです。 実は自分の幸せというものは隣の人の幸せに大きく影響を受けます。 利己主義な生き方ではいつまでたっても四苦八苦という重荷を背負うことになるようです。 私利私欲を遠ざけ、あらゆるものへの執着を断てば、何かを悟るのでしょう。 その根本を教えてくれているのが子どもへの無償の愛、見返りを求めない愛。 つまり神の愛や仏の慈悲なのです。 子どもを育てることで、実は親も成長していくのです。 親の都合や私利私欲を押し通していては、子どもは反発し、やがて親をわずらわしく思うようになっていくものです。 そして、親も成長しないまま年をとっていくのです。 共に心の成長を支え合う関係は、家族の中から四苦八苦を取り除いていく環境となり、そういった家族が増えていくことが住み良い社会の基礎となっていくのです。 人は成長すると、おのずから感謝の気持ちが湧いてきます。 感謝の気持ちで満たされると、苦しみはやがてなくなっていくのです。 「生まれてきてくれてありがとう。」という思いが伝われば、「産んでくれてありがとう。」という気持ちも素直に現れることでしょう。
by ikenosai
| 2010-06-20 06:26
| 現世に乾杯!
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