北海道在住の作家、小檜山博さんの『光る大雪』という実話に基づいた小説があります。
ニート同然だった主人公(著者の父)が結婚し、子どもを授かります。
しかし、上手くいかず、離婚。
その後、希望をもって北海道にやってきます。
お金が貯まったら、故郷の会津へ帰るつもりで働くのですが、お金は一向に貯まりません。
見かねた母が別れた奥さんと子どもを無理矢理北海道に連れてきて復縁させます。
茨の開拓生活は困窮続きでいつになっても生活は落ち着きません。
母が亡くなり、自立へと意識が変わっていきます。
冬はマイナス30度にもなる山中の掘っ立て小屋で炭焼きをし、そこでさらに5人の子どもを授かります。
誰もいない寂しい山中、家族だけで出産をします。
主人公である父が子どもたちをとりあげました。
その小説の“あとがき”で著者は、私が生まれてきたのは“奇跡”だといっています。
両親の巡り逢い、更に復縁がなければ彼は存在しなかったのです。
なかなかまるく治まらない世の中で私たちはたくさんの奇跡と巡りあっています。
実は生まれてきたことがすでに奇跡なのです。
著者は大人になってからも父を恨んでいたそうです。
しかし、自分が生まれてきたとき父がとりあげてくれたことをしみじみと母から聞かされ感激し、それ以来、父への思いが変わっていったそうです。
祖先を敬い、この奇跡に感謝できることが何よりです。
そして、“墓石に掛けられぬ布団”は実は生まれくる子どもたちに意識を向けていくことで、先祖を敬うことにつながるのではないでしょうか。
子どもは先祖からの授かりもの、“慈愛”をもって育てていくことが“自愛”につながるのだと信じたいものです。