いけのさい~子育てと教育の一隅を照らす


「ありがとう!」で終わる人生を目指して、日々のことを振り返り、そして、これからのことを考える。
by ikenosai
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第1夜 “ムーンリバー”が流れた夜

  今日は娘が通う高校の学園祭。

力あふれる吹奏楽部の演奏に「感激」・・・。

高校生はこうでなくては・・・!

硬式野球部の写真の展示を観ながらこの夏の西東京地区予選を振り返っていた。

それぞれに何かが残ったはず・・・!

途中で部活を辞めてしまった娘も、楽しそうに参加していた学園祭。

学校はありがたいなあ・・・と感謝がこみ上げていた。



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第1夜 “ムーンリバー”が流れた夜

 金曜日の渋谷はどの店も若者でごった返していた。

大した期待もせず、ただひたすら酒場にいて、あまり酔わぬようにと意識し、飲み続けていた。

今日は、バイト先の各店舗の仲間たちが集結するコンパの日だった。

やがて、男の子だけの集団に女の子も入ってきて、さらに盛り上がってきた。

初めのうちは冷静に、冷静にと意識し、高まる期待を押さえていた。

しかし、高まる期待は少しずつしぼんでいき、やがて飲み会は終わり、みんな駅に向かった。

帰るグループと次の店に行くグループに別れることになり、迷わず帰るグループに入った。

これ以上飲む気もなかったので帰る方向の電車に乗った。

気がつくと電車は同じ駅を何度か通過していた。

隣には飲み会の途中から隣にいた女の子が座っていた。

どうやら彼女も少し酒に酔っていた。

電車はさらに一周し、渋谷に戻ってきた。

彼女に手を引かれ横浜方面に向かう電車に乗った。

多摩川の長い鉄橋を渡り、次に気がついたときは、横浜駅を過ぎていた。

どうやら、彼女のテリトリーなのか、何の迷いもなく終点まで乗ってしまった。

そして、終点の桜木町から、歩道の石畳にある道標をつたうように港の方へ行き、山下公園に出た。

行く当てもなくここにたどり着いたカップルたちでベンチはいっぱいだった。

夜風が少し肌寒く、もう一枚上着が欲しいくらいだった。

しかし、寒さからか寄り添うのにはちょうど良かった。

二人が座れるベンチは空いていないため、あきらめて、石川町駅の方へ行った。

すでに日付は変わっていた。

電車も終わっていて、ここで足止めになった。

一夜を明かすには少し寒かったので空室のあるホテルを探して入った。

何の抵抗もなく彼女はついてきた。

疲れていたのか、酔っていたのかは分からないけどそのまま眠ってしまった。

 目が覚めたのは明け方だった。

シャワーの音で目が覚めた。

ここにたどり着くまでのこともまったく覚えていない。

シャワーから出てきた彼女は、バスタオルを体に巻いたままベッドに入ってきた。

入れ替わりに僕がシャワーを浴びた。

戻ってきたときには彼女は深い眠りに入っていた。

僕もふたたび眠った。

チェックアウトの時間が迫り、あわてて外に出た。

幻のような一夜が明け、意気投合したような錯覚で、僕たちは手をつなぎ歩いていた。

元町の店のシャッターが次々と開き始めた。

彼女が立ち止まり、水色の印象の強い店内をのぞき、ショウウィンドウを眺め始めた。

そして、一緒に店に入った。

オープンハートのネックレスは買えなかったが、記念にピアスを買ってプレゼントした。
カフェに入り、嬉しそうにピアスを付ける彼女の表情を眺めていた。

長い髪をひとつに束ね、白く透き通るような耳に小さな銀のハートのピアスがよく似合っている。

涼しげな眼差しに僕は釘付けになり、動けなくなっていた。

ああ、何て美しい人なのだろう。

酔っていたのか、昨夜の暗闇の中では気がつかなかった。

彼女はサンドウィッチを食べながらカフェオレを飲んでいた。

僕はタバコを吹かしながらアイスコーヒーを飲み、夢が覚めなければという願いと時々襲ってくる不安からか憂鬱になっていた。

カフェを出て、彼女と手をつないで、坂をひたすら登った。

高台に出ると眼下には横浜港が見えていた。

次第に人が増え、涼しかった朝が終わり、太陽が真上にきていた。

外人墓地を通り抜け、再び元町に戻って石川町から電車に乗った。

何度か乗り換え、鎌倉で降りて、門前町の古い喫茶店に入った。

表面をこんがり焼いたクラブサンドにレタスとかりかりに炒めたベーコンがはさんだのを一緒に食べた。

何をしていても、どんな表情になってもすべてが美しい。

完璧なまでに僕は虜になってしまった。

店を出て、大きな鳥居をくぐり海に出た。

遙か遠くに江ノ島が見え、その手前にサーファーたちが黒山になって波を待っている。

砂浜に降りる階段の途中に腰を下ろし、海を眺めていた。

彼女は裸足になって波打ち際に歩いて行った。

よせては返す波打ち際を行ったり来たりしていた。

そして、僕のところに戻ってきて横に座り、片腕を抱き、寄りかかってきた。

思わず彼女に向くと、額と額がくっついた。

しばらくそのままでいた。

胸がキュンと苦しくて、切なかった。

そして、時間が止まればいいのにと思った。

それは不思議な感覚でもあった。

何とも言えぬ心地良さと相反する耐え難い不安が襲っていた。

ただそうしているだけでドキドキしたり苦しかったりと複雑だった。

そして、彼女の唇に僕は初めてキスをした。

抱きしめたまま動けなかった。

いや、動きたくなかった。

彼女が急に立ち上がり、僕の手を引き、海へ、海へと誘い出した。

波打ち際で手をつないだまま行ったりきたりしていた。

日は西に傾き、ギラギラと光る水面に目を細め、僕は海側にいる彼女を見つめていた。

波の音に僕の言葉はかき消され、彼女も何か話してくるが上手く聞こえてこない。

ただ、伝わるのは強く握る彼女の握力と手のぬくもりだけだった。

彼女が僕の手から離れ、海の中へ入っていった。

遠く浅い海に感じていたが、腰まで浸かり、あっという間に肩まで浸かっていた。

立ちつくす僕は何も出来なかった。

そして、彼女がとうとう見えなくなった。

それでもまだ戻ってくると信じていた。

日は沈み、やがて月の光が波間にゆらゆらとしていた。

ハッと我にかえった僕は彼女を探しに海に入っていった。

彼女はどこにもいなかった。

大きな声で呼んでも、深く潜っても、もう見つからなかった。

海辺にはもう誰もいなくなっていた。

真夜中の月の光が波にゆらゆらとしていた。

砂浜で僕はぐったりとして仰向けになった。

疲れていた。

そして切なさがジワジワと僕を襲っていた。

波にきらきらと映る月の光に向かって目を閉じた。

まぶたの裏にまだハッキリと彼女の涼しげな眼差しが映っていた。

やはり、疲れていた。

そして、しばらく眠ってしまった。

朝の日差しに起こされ、半分開いた窓のカーテンが風で揺れていた。

そこは海ではなく、自分の部屋だった。

涼しげな彼女の眼差しだけが記憶に残り、あとは夢の中の出来事だったように感じていた。

そして、つけっぱなしのステレオからは“ムーンリバー”が静かに流れていた。






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by ikenosai | 2016-09-17 22:31 | 恋別離苦(短編集) | Comments(2)